井崎正治さんとの出会い       

1997年11月の東京ビッグサイトでの国際家具見本市では、特別企画として、作家さん10名の個人展示ブースが設けられていた。
この時、私は、他の作家さんの家具には、それほど興味が湧きませんでしたが、なぜか井崎さんの家具にだけは、強く引き付けられるものがありました。
それは、はじめて見た「無垢材に植物性オイル仕上」ということだと思います。「こんな家具、いままで見たことがない」「こんな家具があるのだ」とはじめて知りました。それは、家具メーカーが作る既製品という品物でなく、作家さんが手作りで作り上げた、心のこもったぬくもり、優しさ、木が生きているような感覚すら覚えました。

それほどまでに、井崎さんの家具には、インパクトがありました。
これが、塗装は論外ですが漆であったとしても、私の心は動かなかったと思います。植物性オイル仕上だったからこそ、無垢の木の良さが十分に伝わって来たのだと思います。井崎さんは、もちろん漆もやられますが、他の方との差別化を意識して、敢えて植物性オイルで仕上た作品を展示されていたそうです。
(後日談)

無垢材に植物性オイル仕上という家具は、何の知識もなかった素人の私にも、木の肌触り、木の杢、質感、手で触ったときの「温かみ、優しさ」など、木の魅力は十分に伝わって来ました

この時、井崎さんは展示ブースにおられたと思いますが、私は家具に見入っていましたので、お話を伺うことすら頭に浮かびませんでした。どのくらいの時間、そのブースに釘付けになっていたか定かではありませんが、体が熱くなるようなワクワクとした感動を胸に、井崎さんのブースを後にしたこと、いまでもよく覚えています。

その2、3年後、雑誌「手づくり木工辞典」で、東京八重洲の田中画廊で井崎さん、工藤さん、野崎さん、川口さん、谷さんの5人の作家さんが「木の家具展」をやられてることを知り、毎年訪れるようになりました。そして何回か井崎さんをお見かけしましたが、少し話しかけ辛くて、話しやすい工藤宏太さんとばかり話していました。
定年まで、この展示会には、足を運んでいましたが、多分最後に伺った時に、やっと井崎さんと立ち話で一時間くらいお話しをすることができました。10年前の国際家具見本市でのお話をしましたが、井崎さんも喜んで聞いて下さいました。

いまも、ご丁寧に展示会の案内状をいただきますが、なかなか東京まで出かける機会がなくて、ご無礼をしております。

  井崎正治の塩津村たより

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